好きって言ったら、どうする?
勇さんが隣に座ると
私達はお互いに黙って海を見つめて
特に何も言葉を交わすことなく
時間を過ごしていた。
………何だろう、これ……
(駅で会った時より……緊張する…。)
すぐ近くにいるのに
何かが遠いような──────
この満たされない何かは
一体、何なんだろう。
「………柑奈。」
────そんな時
不意に 勇さんが私の名前を呼んで
私はそれに少し驚いて
隣の彼に顔を向ける。
勇さんは依然、そのまま海を見つめたまま
静かに…口を開いた。
「………昨日はごめんな。
本当は……あんなことが言いたいんじゃなかったんだ。」
勇さんはそう言うと
海を見ていた視線を少し下げて
すぐ近くの水面を見ながら
真剣な言葉を 私に向ける。
私はそれに
「ぇ…」と小さく声を漏らすだけで
言葉が詰まって
何も言えなかった。
しかし、それでも構わず
勇さんは続ける。
「………本当は、また会えて嬉しかった。」
「…!」
「……もう2度と、会えないかもしれないって思ってたんだ。
……でも、また会えたから。」
勇さんはそう言うと
下げていた視線を上げて
こちらへ顔を向けると
あの……あの、いつもの笑顔を浮かべて
私の方を 見つめた。
「………おかえり、柑奈。」
(っ……!)
────そう言われた瞬間
私の中の何かが大きく揺れ動いて
感情が大きく揺れるように
大きく…鼓動が跳ねる。
ずっと心の奥にのしかかっていた何かが
ここで
静かに落ちたような…そんな感じがした。