好きって言ったら、どうする？

そう思って、私は勇さんの言葉に
首を横に振る。









…私は私のために


勇さんは…自分と、愛理さんのために






それが、きっと正解なんだと


私はそれを信じて疑わなかった。










(………ごめんなさい…。)










こんな風に

勝手に突き放すことを、許してほしい。







勝手に好きになって近づいて

離れていく私を…どうか忘れてほしい。










最後の我儘だから、と

私はそう思いながら 目を瞑って




私の手を掴む勇さんの腕を

そっと…静かに外した。














────貴方を忘れられなかった私を





どうか…嫌いになって。














「……俺は、お前に会えないなんて嫌だ。」

「………。」

「まだお前に言えてないことも
謝れてないことも…まだあんだよ。」











勇さんはそんな私の言葉に

真っ直ぐこちらを見つめながら
そう答えると







納得いかない様子で

私から決して…目を逸らさない。






私はそんな彼の視線から逃げるように



スッ…と、下に視線を下げた。








それでも彼から向けられていると感じるその視線が



心の中を見透かされそうで……怖い。











「…勇さんが私に謝ることは何もないです。」

「ある。
…それにまだ お前に言ってないことも。」

「……聞きたくないです。」

「…………柑奈…。」











私の名前を呼ぶ勇さんの声が

困ったような、少し弱々しいもので。








いつも余裕に満ちていた強気な勇さんには

似合わない……そんな声だった。










────そんな声、ずるい。









そんな彼の声が

私の胸をより一層苦しめていることに





彼は…気付いているのだろうか。