好きって言ったら、どうする?








「………。」










要くんは

いつもの優しい笑みを浮かべたまま
私を見下ろしていて




私はそんな彼の真っ直ぐな視線を
静かに受け止める。









そんな私を見ながら
要くんが不意に 口を開いた。










「……好きだよ、北澤。」

「…!」

「素敵で大好きな…大切な子だ。」











要くんは私にそう言うと

手を繋ぐ力を少し強くして
私を真っ直ぐ捉えている。









───突然の2度目の告白だった。








私はその彼の言葉に
少し驚いて目を丸くしながらも



何か言いたげなその瞳に気づく。








───ドクン、ドクン、と






鼓動が速くなるのを感じた。









「好きな人には幸せになって欲しい。
…出来るなら、この自分の手で。」

「………。」

「…俺だって、そう思ってる。」










─────でも










「…俺は北澤を……幸せにはできない。」









(………っ…。)









要くんはそう言うと


眉を下げながら
困ったように笑って私を見る。







それから繋いでいた手を

強く握っていたその手を───静かに、離した。








私はそんな彼を見上げながら

思わず小さく、目を見開く。










「……北澤を見てて分かったんだ。
…君が幸せになるには…俺じゃダメなんだって。」

「っ………要、くん……。」









要くんは


私にそう言いながらも
どこか切なく、苦しそうで




私はそんな彼を見て 酷く胸が痛んだ。








……そんなこと…考えて、くれてたの…?








「……北澤。」

「………。」

「…まだ間に合う。
次は…きっと絶対に、間に合うから。」

「っ……。」

「だから……行っておいで。」









彼の言葉に何も言えない私へ

要くんは背中を押すように
そう言って、微笑んだ。








───まるであの日私を抱き締めた時と


同じような 優しい声で。








< 386 / 428 >

この作品をシェア

pagetop