好きって言ったら、どうする?
(……あーあ…行かせちゃった…。)
ゴンドラに乗り込んで
下へ降りただろう彼女の残像を
瞼の裏で眺めて
それから静かに、瞳を開けた。
(……一瞬の、宝物だな……。)
そして側から見える夜景を眺めて
そんなことを思う。
……違う誰かを想っていても
誰を思い出していても
きっと……この景色を一緒に見たときの あの笑顔は
本物だったと……そう思いたい。
「………これで…」
これで本当に───俺の片思いは終わり。
彼女の本当の笑顔が見れただけで
もう、俺には十分。
(……あとは………)
彼女が───北澤が
幸せになれば、全部報われるよ。
(………さぁ、帰ろうかな。)
俺はそう思って
自分の荷物を肩にかけ直しながら
白い息を ふぅーっと吐いてから
静かに歩き出す。
─────大丈夫。
(きっと大丈夫だよ…北澤。)
今度はきっと……ちゃんと
彼も君も、迷ったりしないから。
▲要side END▲