好きって言ったら、どうする?
▼勇side▼









「………はぁ……。」









行き交う人の中で

去年と少し変えてある
あの大きなツリーの下で




俺は小さく息を吐きながら 空を見上げる。








冷えてきた体を無視して

手をすり合わせながら
首元のマフラーを少しだけきつく締めて



再び辺りの人混みに目を向けた。









───時刻は、もうすぐ9時を回る。









あいつどころか、似たような姿さえ
目に付かないことに


少しだけ…気が落ち込んだ。








………やっぱり、来ないか…。








全く来る気配のない

ずっと同じような光景を目にしながら




俺はジャケットに入れてあった
あの箱を取り出す。









……去年、あいつにあげられなかったネックレス。








捨てるに捨てられなくて

ずっと綺麗に取っておいてしまっていたそれは




中身を開けてみると、やはり見たときと同じように


目を引くような輝きを
そこから放っていた。









(…もし、あいつが来てくれたら…)









今度こそ、渡すつもりでいたもの。







しかしこの時間になっても
一向に現れる様子のないあいつに



俺はそのネックレスの箱を閉じながら


自嘲じみた笑みを浮かべる。









……結局、渡せないんだな…。









(………そういう、運命なのか…?)









認めたくないその運命の存在を
俺は考えながら

傍の時計台を見上げた。













───時計が、9時を回った。









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