好きって言ったら、どうする?
そしてそのまま歩いて
ラーメン屋の店の前まで来ると
ちょうど中から
店長が扉を開けて出てくる。
そして帰ってきた俺を見て
「お!!」と声を上げた。
「勇!ちょうど良いとこに帰ってきた!
お前ちょっと中入れ!」
「え……何でですか。」
「いやぁアヤがよ、今さっき部屋の整理してたら浴衣見つけたっつーから
どうせならお前にやろうかと思ってな。」
店長はそう言って
ケラケラと笑いながら
まだ返事もしていない俺を店の中へと押し入れる。
アヤ---というのは店長の奥さんのことだ。
「お前背高ぇから丈が心配でよ。
…ほらコレだ。どーれ……っと、お!
丈は全然平気みてぇだな!」
「………。」
「この柄もお前に似合うし丁度良いぜ。
これもらってくれや。な?」
店に入るや否や
店長がその『家にあった浴衣』を持って
俺に合わせてから そう言う。
浴衣は、濃い灰色の地に黒の縦線が等間隔に入ったシンプルな柄のもの。
シンプルな分
別に自分の好みがどうかという点には関係はしなかったが…
(……でも浴衣なんて滅多に着ねェし。)
俺はそう思ったものの
目の前の店長の機嫌の良さに
何だかそうは言えず
そのまま「…どーもっす。」と返して
その浴衣を受け取った。