珠利と真実―約束の恋の音色―
pianist命(みこと)誕生
あっけにとられながらも、ソファーで気を落ち着かす。

そして、ひとりの女性が

「ハナミチ、また新しい子が入ったの?」

真実を見て言った。

「彼、プレイヤーではなく、ピアニストなんだ」

「あらそうなの。せっかく、いい男なのに」

いやらしく目を細め真実の全身を見つめる。

「はじめまして、命です」

「はじめまして、スカウトをしている、歩湖です。よろしくね」

大きなイヤリングが揺れて、栗色のロングパーマが似合う大人の魅力がただよう女性だ。

『ラブストーリー』では歩湖(あゆこ)みたいなスカウト、バーテン、内勤など、女性スタッフが数名いる。

そして、さすがにホストクラブの女性スタッフをしていると、ホストにさめやすくなる(笑)

以前は女性内勤を雇ったことで客から

「私たちはお金払って、担当(本指名)に会いに行ってるのになんであんな女がタダで会ってるの!!」

という苦情が来たこともあった。

そして、ミーティングの時間。

スタッフたちに真実を紹介した。

「はじめまして、命です。ピアニストととして入りました。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

真実は礼儀正しく挨拶した。

そして、さほど真実には関係ないが、プレイヤーの接客についての注意など、竪山が話してミーティングは終了した。

それぞれ、キャッチ行ったり、チラシ配ったり、携帯いじったりしている。

ソファーからピアノを弾く準備をしていたら、ホストたちの会話が聞こえる。

「おい、美乱。昨日も俺の客と番号交換したな。いい加減しろよ」

先月No.1のひなたが切れ気味に言う。

「また小言っすか」

歌舞伎町1と言われる、爆弾ホストの美乱(みらん)は反省0のようだ。
真実はどの曲弾こうか迷っていたら、一人のプレイヤーが寄ってきた。
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