珠利と真実―約束の恋の音色―
そんな珠利と違い、吉原で今日も体を売る涼夏。

吉原の大衆店
ソープランド
『ゴールド』

今日も個室で涼夏は好きでもない男を恋人扱いする。

“くるみ”という源氏名で働く。

店次長の田巻(たまき)と付き合っている。

涼夏自身、田巻一直線だ。

二人の仲は店長の鈴置(すずおき)も公認だ。

鈴置は二人が付き合う条件として、仕事に支障をきたさないことを言った。

だから、他の男と肌を重ね合わせる涼夏に関しても、田巻は何も思わないようにしている。

もっとも、田巻は“受け身”みたいなかたちで涼夏と付き合っていた。

涼夏があんなに一途に想っているから田巻も受け入れてあげることにした。

これで涼夏の頑張りに繋がればと思うが最近、田巻は“店の女の子に手を出すなんてこの業界にたずさわる人間なのに間違ったことをしている”と、悩む。

田巻自身、仕事が出来る、かなり真面目でときには上司である鈴置に説教をするときもある。

それだけ、仕事人間だ。

涼夏もそんな姿に惹かれたらしい。

涼夏は職場の寮であるワンルームマンションで暮らしている。

同じマンションに田巻も住んでいる

そんな田巻との恋愛について、たまに涼夏から珠利は相談をうける。

涼夏は自分より、仕事が恋人になっている田巻のために一生懸命働く。

仕事に支障が出れば、別れなくてはならなくなる、そんな不安を抱えている。

どんなに恋人という関係が事実であっても田巻の気持ちは仕事ばかりだった。

珠利は涼夏に対して、そんな男と別れて、早く普通の生活をして普通の恋愛がして欲しいと母親みたいなことを考えていた。

そして、何よりも涼夏の父・善になんて言えばいいのかと悩んだ。

善は今、台湾に住んでいる。ずっと単身赴任中だ。

一時期、日本で家族と住んでいたこともあり、そのとき、朝霧家は東京から大阪へ引っ越しをした。

涼夏の母、弟・稔(みのる)は大阪に住んでいる。

珠利は涼夏のことについては真実にまた相談しようと思った。
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