成すべきことは私が一番よく知っている
「当ったり前じゃん! そもそも、寝たら起きられないし」
「眠くならないの?」
「そりゃなるけど、バスの中で寝たら、もう降りたくなくなるじゃん?」
学園に向かって歩き出し、歩道に立っている赤と白のポールをぺしぺしと叩きながらあっけらかんと答える、友人の山之内朱里。
そういえば、と清美はふと思った。この元気な友人と知り合って、まだ一年と少ししか経っていない。清美が中学三年生のとき、クラス替えで隣の席になった朱里は、とても活発な子だった。その頃から朱里とは親友になれそうな気がしていたし、実際そうなった。高校も晴れて一緒に行けたし、なにか感慨深い。
学園に着いた。グラウンドでは、サッカー部や野球部などが朝練習と称した部活動に打ち込んでいる。その横を、清美と朱里がたわいもない会話をしながら歩いていく。
「あ、清美! 見て!」
朱里が突然声をあげて、グラウンドを指差した。その方向に目を凝らして見ると、数人の男子生徒が、汗を垂らしながら走り、白黒のボールを蹴っては転がしていた。
「サッカー部がどうかしたの?」
「あれあれ! あの人! 長身で茶髪の!」
朱里が言っているのは、今パスがまわってボールを足で受け取った男子生徒のようだ。茶髪で長身。遠くから見ても、その髪色は鮮やかな輝きを放っていた。茶髪のその男子は、ボールをドリブルしながら、凄いスピードで次々と他のサッカー部員を抜いていった。
「きゃーー!」「先輩ーー!!」「こっち向いてくださーーい!!」「ステキぃぃーーっ!!」
少し離れた場所では、清美たちと同じく登校中か、もしくは部活開始時からそこにいたのか、制服姿の女子生徒たちが群れを成してその茶髪の男子に黄色い声援を送っていた。