成すべきことは私が一番よく知っている
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「俺、たぶん好きなんだ。キミのこと」
日は傾き、すでに西の空に半分ほど埋めている。部活練習後のため、額に滲ませた汗がその夕日に照らされ、まばゆくオレンジ色に光っている。
場所は校庭。サッカー部がいつも使っているグラウンドの一角だ。そこで清美は、人生で初めて、異性から告白された。
下校時も一緒にいることが多い友人の朱里は、今だけはとなりにいなかった。委員会で少し遅れるから先にバス停で待ってて、と言われたのはつい先ほどだ。「先に帰ってて」ではなく、「待ってて」と言うところが彼女らしい。
「どうしてかって聞かれると、うまく答えられないかもしれない。だけど、その、気になるんだ。……だから、もっと知りたい。キミのこと」
守屋拓海は、清美の困惑した顔を覗き込みながらそう言った。優しい目だった。何者をも包み込むようなライトブラウンの瞳。じっと見つめられていると、吸い込まれてしまいそうだ。
結局そのあとは有耶無耶になり、錯乱状態の清美は「少し考えさせてください」とだけ残してその場から逃げるように去ったのだった。
もうとてつもなくドキドキした。心臓が破裂するかと思った。異性から告白された経験は初めての上、あのような美男子に手を伸ばせば届く距離まで接近されてああ言われては、もはやお手上げだ。拒む理由は見当たらない。故に疑問は沸くばかりだった。
清美はあまり異性からもてはやされるタイプではない。成績は至って平均値。運動音痴。帰宅部。友達からは、いわゆる地味系と言われている。校内でも上位を争う、憧れの男子に告白される要素など微塵も持ち合わせていない事実は、とにもかくにも清美自身が一番よくわかっている。