極上な御曹司にとろ甘に愛されています

名前は『ノワール』

私がランチの場所に困っていると、真木さんが恭介と一緒にここに連れてきてくれた。

大人の隠れ家的な場所で、昼間は準備中の札がドアにかかっているせいかごく親しい常連さんしか来ないらしい。

夜になると政財界の大物もひょっこり現れるという知る人ぞ知るって場所。

夜のメニューはあっても、昼のメニューはない。しかも、夜のメニューには価格の表示がない。

何でもここのマスターは真木さんの叔父さんらしくて恭介とも顔見知りのようだった。しかも、昔は水無瀬製薬で働いていたとか……。

真木さんや恭介も月に何度かは来るらしい。

お昼に来るといつもマスターは私の好き嫌いを知った上で、賄いとブルーマウンテンのコーヒーを出してくれる。

それをたった五百円で提供してくれるのだ。ランチとはいえ、この場所で安すぎない？って思うのだけど、マスターは『甥の知り合いだから』と微笑むだけ。