極上な御曹司にとろ甘に愛されています
恭介の耳元で叫ぶが、彼は目を開けない。

嘘……だよね?

きっと悪夢でも見てるんだよね?

そう信じたいけど、恭介の生々しい血がこれは現実だと私に教える。

「誰か……誰か救急車を呼んで下さい!」

恭介の様子を見て気が動転した私は、彼の手を掴みながら声を限りに叫んだ。

だが、周りに集まって来た人は、ただ見ているだけで動かない。

「お願い!誰か助けて!」

早く病院に連れていかないと、彼が死んじゃう!

かすれる声で私はもう一度叫ぶ。

そこへひとりの老人が現れた。

『ノワール』で私にカシスのムースをご馳走してくれたあのおじいさんだ。

「早く、救急車を」

おじいさんは近くにいたホテルの従業員に声をかけ、私の元へ歩み寄る。

総務部長もやって来て私達を見て慌てて駆け寄ると、恭介の腕を取り脈を確認した。
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