極上な御曹司にとろ甘に愛されています
恭介が戻って来てくれてホッとする。

彼は周囲に気づかれないように、私の手を一瞬だったけど握ってくれた。

“もう大丈夫だから”と私に言ってくれてるみたいで……。

「水木さんの声がエレベーターの前まで聞こえてきたけど、何があったのかな?」

真木さんは柔らかな笑みを浮かべながら、水木さんに目を向けた。

「……何でもありません。ちょっと誤解があっただけです」

水木さんは真木さんから目を逸らしながら弁解する。

そんな彼女を冷ややかな目で見ると、田中君は真木さんと恭介にはっきり告げた。

「水木さんは相田さんにあることないこと言って、相田さんを困らせてたんです」

田中君の言葉にその場がシーンとなる。

最初に、その沈黙を破ったのは恭介だった。

「へえ、具体的にはどういった内容なのかな、田中?」

魔性のような笑みを浮かべる恭介の迫力に、田中君はゴクッと息を呑むと、躊躇いながらも水木さんが私に言った言葉を口にした。
< 285 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop