極上な御曹司にとろ甘に愛されています
『う~ん、そういう例はないなあ』

ゆっくり首を傾げながら、部長は少し困った様子でそう告げる。

『……断れないんですね』

部長の答えに私は項垂れた。

自分でも示達を覆すことはできないとわかってはいる。私は水無瀬製薬の一社員にすぎないのだから……。でも……まだ納得出来ない自分がいる。

突然告げられた異動に、私の頭はかなり混乱していた。

『そんな絶望的な顔しなくても大丈夫だよ、相田さん。ここだけの話、向こうの真木課長が君が欲しいって名指しで指名してきてね』

『真木課長が?』

私は顔を上げ、まじまじと部長を見た。

真木課長とは仕事で何度もやり取りをしている。ふわりとした茶色い前髪を横に流し、整った顔立ちをしたイケメンだ。
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