千年の眠りから覚めれば
壱
うごきだす刻
毎日の習慣で聞き慣れた
どこか調子の狂うようなラジオ体操の音が、
外から指す朝日とともに襖の間から流れ込んできた。
夜の帳はとっくに上がったはずなのに
未だ布団の中でうずくまり小さな寝息をたてるのは
この部屋の主である 東条院 那雪─トウジョウイン ナユキ─だ。
薄地の布団は華奢な体つきに沿って流れ落ち、
女らしい柔らかさは感じられないながらも、
少年的にほねばっているわけでもない、
綺麗としかいいようのない肢体にモデルも真っ青の美貌。
丸めがちな茶色の大きな目とそれを縁取る長いまつ毛。
肌荒れの一切ないキメ細やかな真っ白な肌に、
小ぶりな頭とそれぞれ美しくあるべき場所に収まったパーツ。
天パはさらさらのふわふわで背中の中くらいまであり、
柔らかく布団の上をこぼれ落ちる。
人を惹き付ける恵まれた容姿ながらも
それに残念さをつけたすように、生活は不規則だ。
習慣である毎日の朝練習で
ラジオ体操はその最後にやる。
どうも朝に弱い那雪は、大抵いつもラジオ体操は
確実に参加できる時刻に起きるのだが、
今日は遅刻決定だった。