お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
プロローグ
28歳。仕事にも慣れ、やりがいを感じていた時だった。その一方で、30歳を前に揺れ動いていた時期でもあった。
女子大時代の友達が、少しずつ結婚しはじめた。結婚願望がないわけじゃない。彼氏のいない私は、30過ぎには、と漠然と結婚を思い描いてはいた。
結婚に結び付かない恋愛はしたくない。そう思っていたのに。
憧れの彼は既婚者で、華やかな高嶺の花だった。既婚者でなくとも、手の届かない存在だった。
職場の廊下で挨拶をしてすれ違うだけの関係。すれ違い様、彼から香るフレグランスの匂いがいつしか挑発的な香りに変わった時、私達の恋は秘かに始まった。
女子大時代の友達が、少しずつ結婚しはじめた。結婚願望がないわけじゃない。彼氏のいない私は、30過ぎには、と漠然と結婚を思い描いてはいた。
結婚に結び付かない恋愛はしたくない。そう思っていたのに。
憧れの彼は既婚者で、華やかな高嶺の花だった。既婚者でなくとも、手の届かない存在だった。
職場の廊下で挨拶をしてすれ違うだけの関係。すれ違い様、彼から香るフレグランスの匂いがいつしか挑発的な香りに変わった時、私達の恋は秘かに始まった。