お口にクダサイ～記憶の中のフレグランス～
先生が近くにいる。それだけで顔が赤くなっている気がした。それなのに、先生は顔色ひとつ変えずに、「嫌いなものとかある？」

「いえ、ないですけど、お酒がそんなに強くなくて」
「あ、そうだったね。スパークリングワインなんてどう？口当たりがいいから飲みやすいよ」
「じゃあ、それで。料理もおまかせします」

先生は注文を聞きにいた店員と談笑しながらも、本日のお薦めを聞いては、てきぱきと注文していく。しばらくしてスパークリングワインが運ばれてきた。

「じゃあ、お疲れさま、乾杯」緊張からスパークリングワインをぐいっと飲み干す。

「あ、咽渇いてた？」
「はい。何だかその緊張しちゃって。美味しいです、これ」
「よかった。どうして緊張してるの？あ、席が横並びだもんね。動いたら腕とか触れそうだもんね」先生は笑いながら、運ばれてきた前菜を皿にわけてくれる。

「あ、私やります」
「いいよ、今日は僕がおもてなし」
「ありがとうございます。・・・先生と距離が近いから、いつもの・・・私の好きなポロスポーツの香りがいつもより強く香るからかもしれないです。ドキドキしちゃうの」

お酒に弱い私だけど、酔うと結構気が大きくなり時に大胆になってしまう事がある。

先生はその言葉を聞いて「ドキドキしちゃうの？嬉しいな。そうだ、カミングアウトしちゃうとね、この横並びのこの席ね、話の流れとかで気軽にボディータッチ出来るからいいんだよ」そう言い屈託のない笑顔で笑った。


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