お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
「ブルームーンって、ひと月に2度現れる満月のことなんだよ。実際に青い月が見られるわけじゃないけどね。非常にまれなんだって」

「て、事は見れたらラッキーってことね?」
「うん。だからブルームーンには願い事を叶えてくれるって言われてるんだよ」

「願い事かあ・・・先生とこのままずっといれますように。なんてダメ?」
先生は微かに笑ったけれど、それに対しての言葉を曖昧に濁して、うまく流された感じがした。

「・・・月が満ち欠けするように、私の心もうつろう。だから月なのかもね・・・」静かに目を伏せた私の唇が乱暴にこじあけられた。

「ブルームーンより、月より団子だよね、君は」小さなマシュマロを口に放りこまれた。

「甘くてとろける」私はそう言い、口一杯に広がった甘さを確認するかのように、口の中でそれを転がすようにして味わう。

「僕もちょうだい」口を開けた私の舌の上の溶けのこったマシュマロを舌で絡めとる。淫靡な甘さをまた知った。

「僕は君を愛している。君といる今、この一瞬を大切にしたい。先の事まで考える余裕がないんだ」

ずっと続く関係ではない・・・それを示唆したのだろうか?でもいい。

「何だかうまく丸め込まれたみたいだけど・・・今日は満月たから赦してあげる」
「ありがとうシンデレラ。僕は王子様じゃなくて今夜は狼男になっていいかな?」

「ふふ」
私たちは部屋に入り、ベランダの窓に鍵をかけた。心行くまま、気の召すままに。大胆になってもそれは月のせい・・・。

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