お口にクダサイ～記憶の中のフレグランス～

旅行になんて行けるなんて思ってもみなかったから、子供のようにはしゃいで前日の夜に発熱してしまった私。どうやら知恵熱ではないけれど、興奮しすぎたのが原因だったらしい。当日には平熱に戻ったのだから。

新神戸で待ち合わせて、新幹線に乗り込む。

私にはささやかな夢があった。それは、人目を気にせずに、先生と手を繋いで歩くこと。新幹線でもずっと手を繋いでいた。

そんな事が夢だったの？と先生は笑ったけど、気持ちはわかるよ、と呟くように言った。

「懐かしい。何度か山口県に行ったの。山口県のういろうだったかな？豆子郎（とうしろう）大好きなの。あっさりしてて、優しい味で。あとは萩焼きとか。秋吉台の洞窟も大好き。ゆっくりできるといいな」

高校生の時に、秋吉台の秋芳洞に行った事がある。台風が来ていて、その影響で洞窟内も増水しており、立ち入り禁止になり、入ることが出来なかった。

「・・・詠美ちゃんって結構雨女だもんね。沖縄2回行って2回とも台風だって相当だね」先生はそう言い笑った。