お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
私は後日、意を決して先生に電話をした。
仕事中だったのだろうか?電話に出ることはなかったが、後から折り返し電話があった。
「大切な話があるの。だから近々会えない?」
「・・・僕の方も話が・・わかった。今日の夜はどう?僕が君の家の近くまで行くよ」
「わかった」それだけ答えて電話を切った。
いつもは先生に早く会いたいと思うのに、今日ばかりは複雑だった。
会えば別れ話になる。仕事を終えてロッカーで着替えを済ませて、家の鍵がついているキーケースを取り出すと、あのシンデレラの片方のチャームのついた「秘密のタワーマンションの部屋の鍵」が目についた。
私はそれを、泣きそうになりながらキーケースから外した。今夜には返さないといけない。もしかしたら、あの部屋を引き払うかもしれない。先生との秘密の逢瀬そのものが、なかったことになりそうな気がして、胸が痛んだ。
沢山の想い出が残っているあの部屋。当たり前のように過ごしていた日々が懐かしくも遠かった。全てが今、過去形になってしまう。
想い出が多すぎて、整理がつかない。わかってて踏み出した恋なのに・・・先生と今夜会って、別れをうまく伝えられるだろうか?
仕事中だったのだろうか?電話に出ることはなかったが、後から折り返し電話があった。
「大切な話があるの。だから近々会えない?」
「・・・僕の方も話が・・わかった。今日の夜はどう?僕が君の家の近くまで行くよ」
「わかった」それだけ答えて電話を切った。
いつもは先生に早く会いたいと思うのに、今日ばかりは複雑だった。
会えば別れ話になる。仕事を終えてロッカーで着替えを済ませて、家の鍵がついているキーケースを取り出すと、あのシンデレラの片方のチャームのついた「秘密のタワーマンションの部屋の鍵」が目についた。
私はそれを、泣きそうになりながらキーケースから外した。今夜には返さないといけない。もしかしたら、あの部屋を引き払うかもしれない。先生との秘密の逢瀬そのものが、なかったことになりそうな気がして、胸が痛んだ。
沢山の想い出が残っているあの部屋。当たり前のように過ごしていた日々が懐かしくも遠かった。全てが今、過去形になってしまう。
想い出が多すぎて、整理がつかない。わかってて踏み出した恋なのに・・・先生と今夜会って、別れをうまく伝えられるだろうか?