お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
「えー?フラれたって言ってもさ、順一くん出不精だったんでしょ?それが不満なのにズルズル付き合ったって、時間の無駄!次いこうよ、次」

心咲の励ましの言葉に、全くの正論だと思う反面、出会いの場所に行くことが億劫になってきた。

飲み会に誘われても断っていた。私が結婚したがっていると知ったおばが、見合いを勧めてきた。

見合いをすれば、相手も結婚相手を探しているのでうまく行けば、結婚に一番たどり着きやすいだろう。しかし見合いと聞くと、途端に構えてしまうところがあった。

「見合いと言ってもね、釣書とかいらないし、もっとフランクな感じだと思って気軽に参加してよ」おばさんの言葉に、わかりましたと言い、とりあえずお見合いをすることにした。

しかし見合いの前日だったか、おばさんから連絡が来て、
「詠美ちゃん、いい子だって言っておいたからね。そうそう女優のHさんに似てるって言ったら相手が乗り気でね・・・」
「似ても似つかない女優の名前出さないでよ、相手ガッカリするじゃない」
「そう?似てるじゃない」

おばさんは身内だから、良いように言ってくれるのは感謝している。ハードルを高く上げられて、望むお見合いはプレッシャーだった。

案の定、Hさん似と聞かされてお見合いに望んだ相手の男性は、私の顔を見た途端、落胆の色が隠せなかったようだった。終始苦虫を噛んだような顔をして、早く帰りたそうだった。

後日相手から断られ、そのお見合いは全く進展せずに終わってしまった。

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