お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
私と直哉は野球の話で盛り上がった。
連絡先を交換した。そして直哉からメールが来た。

「今度、うちの母校の高校野球の予選がはじまるから一緒に見に行かない?」という内容だった。大好きな野球観戦とあって行きたいと返信した。

彼が私の住んでいたアパートの最寄り駅まで車で来てくれた。お酒の席では饒舌だった彼はそんなに喋る方ではなかった。

特に外見が好みというわけではないけれど、一緒に野球を観戦していた中であ、この人いいかも、と思い始めていた。

「すげえ緊張する」と試合が始まる直前にそう言うものだから、私といることで緊張しているのかな?と思ったら違っていた。

緊張すると言ったのは、後輩たちの試合なのに、自分があたかも出ているように、緊張していると彼は言ったのだ。

プレイに一喜一憂する彼が何故だか可愛らしく思えた。試合は負けてしまったけれど、せっかくだからと近くにあった小さな動物園に行ったり、ちよっとしたデートになり楽しかった。

また直哉の方から、「よく淡路島にツレと釣りに行くんだけど、魚の美味しい店があるんだ。今度行かない?」と別れ際に言われた。

「うん!お刺身とか大好きだから、楽しみにしているね」と私は答えていた。

直哉をもっと知りたいと思う自分がいた。
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