お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
先生と私の関係は先程も書いたように、【不倫】関係だった。【不倫】と書くと、倫理や、モラルに反するというマイナス要素しかない。

けれど【婚外恋愛】と書くと、途端にマイナス要素でしかなかったものが、プラスに生じたかのような錯覚に陥る。

こう言うと語弊が生じるかもしれないが、【婚外恋愛】という言葉が世間に浸透すると、気軽に婚外恋愛を始めてしまう人も中にはいるかもしれない。

そんな中、【婚外恋愛】をテーマにしたドラマがヒットし、映画になるという。かつての自分がそうだったように、背徳的な関係だと燃えるのだろう。

許されない恋に身を投じる。私は常に日陰の存在だった。

いつか終わりが来るとわかっているからこそ、あの頃の私達は濃密な時間を過ごそうとしたのかもしれない。

そして私は結婚して妻になった。私は先生の奥さんと同じ人妻になったのである。

過去の先生との関係を思い出すたびに、婚外恋愛をしていた立場から、夫に婚外恋愛をされてしまう妻の立場で物事を考えるようになっていた。

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