お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
「何かさー。一気にネタばれしちゃってさ、眠気に襲われてきた。寝たらごめん」

え?ええ?寝てしまうって・・・。
仕方ない。

「じゃあ私も寝ようかな。相手にしてくれないなら」

ぶーたれて、シートを倒そうと試みる。

「ねー?先生、シートうまく倒せないんだけど。ね?どこ?倒すとこ。レバー。」

「んー?」半分寝かかっていた先生は、どれどれ?と私のシートを倒そうと、こちらに体を向けて起き上がった。

そこをさ、と言った先生に、

「よくわかんないから、倒してよ」
「了解。あー。目覚めてきた。よかった」

あくび一つして、私が座っているシートの上にかぶさるようにして、私のシートの横のレバーに手をかける。

レバーを倒すと先生は、シートに寝転んだ状態の私の上に覆い被さるような形になる。この状態だとキスするのにいいタイミングだと、助手席の女性にキスする男性は多いかもしれない。

けれど先生は「これ、もしかして仕掛けたの?僕がいやでも君の上に覆い被さる形になる。強引に僕の唇を奪うの?ベタ過ぎる」

「そうよね。ベタ過ぎるよね、私もそう思う。ドライブシアターなんて場所じたいベタだもん」

勝負にならないといった風に、先生は身を起こそうとした。

「私はまだ仕掛けてない。勝負はこれからよ?」意味深に私はそう言い放つ。

先生は相変わらず私の上にいるけれど、シートをフラット状態に倒して寝転がっている私に対して、先生は身を起こして丁度私の上に馬乗りになっている感じだ。

仕掛けるならこの距離感だ。

私の負け?

いや、逆襲のチェックメイト(王手)を打つなら今だ・・・! 

仕掛けた【その瞬間】「えっ?」先生は確かにそう声に出した。

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