お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
唇と唇がふれあう前に、私の団子鼻に、先生の鼻筋の通った鼻が触れられ、スリスリされた。鼻同士のキスが先生との最初のキスだった。

予想外に唇にキスより先に、鼻スリスリが来ただけなんだけど。けれどそれは、どんなキスより、君が好きだよって伝わるキスでもあった。

仮に遊びのキスはできたとしても、私は鼻スリスリは、本当に好きじゃないと出来ないから。

顔を離した先生の照れた顔に、私は嬉しくなって先生の首根っこに抱きついた。

「最高のキスをありがとう。嬉しい」
「鼻スリスリだけでいいの?」
「やだ。」

先生は優しく笑って唇にキスをくれた。唇同士が少し触れあうようなそんな軽いキス。
「もう一回して」
「じゃあ、もう一回だけね」
「意地悪」

沢山私の上にキスが降ってくる。キスゲームで駆け引きしていたわけだけれど、欲しくてたまらなかった、愛する先生のキス。

いつしかキスも熱気を帯びてきて、吐息が漏れるほどになる。映画はもう目には入らない。貴方しか目に入らない。

先生は悪戯っ子みたく、舌を唇からべーっと突きだした。

「ほら、真似してみて?」 
「何それ?」真似して舌をべーっと突きだした。

「これもキスだよ」
唇が触れあわない、舌だけ触れるキス。
イケナイことをしている・・・そんなキスが続くと、脚の間が疼きだした。

ふいに、スカートの中に先生の手が入り、内腿が撫でられる。

ドキッとして、そこに目が囚われ、神経がそこに行くと、無防備な私の唇が狙われて、不意打ちをくらった。

「もー。歯茎はくすぐったいから反則だよー」
「キスばかりに集中しすぎるからだよ」

「勝利宣言はしたけど、完全勝利は出来なかったよ、私」
「そう?」
「先生のキスに骨抜きにされちゃったもん・・・先生、大好き」
「・・・僕もだよ。またキスしたくなっちゃったよ」

お互いの唇が渇く暇もないくらい、キスが数えられない位、たくさん、たくさん・・・。

「キスから先が欲しくなったよ」って言うと、「じゃあまたゲームの続きをしなきゃね」って。

この先も、愛しい貴方はときどき悪魔になってしまう。

困ってしまうのだけど、それが愛しくもあったのだ。



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