お口にクダサイ～記憶の中のフレグランス～

「合鍵を探してね。僕の前だけでシンデレラになれるガラスの靴も見つかるから」

先生の秘密のタワーマンションは、先生の事務所から車で10分弱の所にあった。車が地下階にある駐車場へと入っていく。

「ここオートロックなんだ」先生はそう言い、建物の前で鍵を差してオートロックを解除したらしい。

私はあたりをキョロキョロ見回していたから、ピーっと言う機械音でオートロックが解除された事を知った。先生に続いて入り、エレベーターに乗り込む。

「生憎と最上階じゃないけど、それでも高層階かな？」

ほどなくして、エレベーターは先生の部屋の階で停まった。

夜遅い事もあるけれど、とても静かだ。街の喧騒とはかけ離れて、ここだけ違う時間が流れているようだった。

「掃除は定期的に業者がやってくれているんだ」

先生は鍵を出して部屋を開け、部屋の電気をつける。目の前に飛び込んできたのは、足元まである大きなガラス窓だった。

私は感嘆の声をあげて、窓の方へと向かった。