お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
口移しで、口の中にまだ残っているライチを先生に渡す。そのままライチの香りと、ウィスキーが合わさり不思議な味がする。先生は舌で綺麗にライチの一欠片まで絡めとる。

思わず吐息が漏れた。そのままキスに移行する。もうライチの余韻はないけれど、ウィスキーの香りはまだ消えそうにない。お酒の苦手な私は苦味しか感じない。

「こんな(食べかけのライチ)の美味しいの?」
「美味しいよ。君の温もりが口の中にも広がるからね」

「じゃ、先生私の温もりもっと欲しい?」

「え?」

「少し待っててね。先に私も喉渇いたから、ジュース冷蔵庫に入れさせてもらってるやつ飲むね。グラス借りるね」

「ああ」不思議そうな顔をしている先生を残して、私の温もりを伝えるべく冷蔵庫へと向かう。そして私は冷蔵庫のに入れていた、グレープフルーツのジュースを取り出した。

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