お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
「そ、それって」私は笑いが込み上げてきた。

「ど、どこで売ってるの?レンタル?」そう聞かずにいられなかった。

ディズニーの映画「魔法にかけられて」のエドワード王子のコスプレで、車の前で真っ赤な顔をして先生は立っていた。

「40のオッサンがさ、こんな格好してるんだよ。詠美ちゃんのスエットどころじゃないよ。恥ずかしさはさ。あ、入手先は秘密」

「普通に歩いてたら、変質者として通報されるとか、警察に出くわしたら職務質問よね、絶対」

先生は笑いながらも、腕時計の時間を確認する。

「やばい!早く乗って!時間が」
「わかったけど、何?0時まわると、誕生日が過ぎちゃうから?」

「違うよ。君へのプレゼントは時間指定のやつなんだ。君は、僕の前ではずっとシンデレラなんだよ。格好とかそんなのどうでもいい」 

【時間指定でもして、宅急便なんかで私のプレゼントが配達されるのだろうか?】

とにかく早く、と促された私は車の助手席に乗り込む。

「ちょっと飛ばすよ。」アクセル全開のフルスロットルで何が待ち受けているのかわからないけれど、やはり好きなんだと、黙って運転する先生の横顔にそう思った。
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