お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
「色とか形とか気にしてるけどさ、詠美ちゃんフツーだよ。フツーって言うのもおかしいけど、皆そんなもんだよ」
「そうなのかな」
「だって中2だったんだろ?相手の男の子もさ、きっとビデオとかそんなんでしか知らなかったんだよ、女の子の事をさ。色とかそんなもの、幾らでも修正できるしさ」
ユッキーにそう言われて、心のしこりが少しずつ消えていった。
「ま、いつか本当に好きな男が出来たら、嫌いな臭いも愛しく思える時が来るかもよ」そう言い、ユッキーは笑った。
それ以来、セフレというのはおかしいかもしれないけれど、ユッキーはお兄ちゃん的な存在で、大学を卒業するまで、関係は続いたのだった。
あの日のユッキーは言った。好きになれば、苦手な臭いもいつしか好きになるかもよ、と。
いつしか、昔の事を懐かしく思い出していた。
そして、先生と出会いこうして同じ時間を過ごしている。ほどなくして、秘密のタワーマンションの一室で、先生は教えてくれた。味わった事のない、甘美な悦びを知る事になる、ここでの時間を・・・。