お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~

バスバブルのバースデー

私の誕生日のすぐ後に、先生の誕生日があった。

先生は色々と高いものを持っていそうなので、プレゼントは品物ではなく、お誕生日のプランを練り、それをプレゼントにするようにした。

誕生日当日は一緒に過ごせなかったけれど、先生も休みが取れたので、ゆっくりとデートする事が出来た。

「童心に帰れる誕生日ツアー?」先生は私が作った誕生日ツアーの予定表を見て、こんなにうれしいプレゼントはないよ。ありがとうと言ってくれた。

廃校になった小学校で、給食を食べる事ができたり、白衣を着て理科の実験が出来たりするものがあった。小学生に戻った気になれるのだ。

平日の昼間とあって、他に客はいなかった。教室もきちんと低学年用、高学年用とわけられていた。

「わっ!可愛い」私は思わず感嘆の声をあげた。低学年の教室とおぼしきその教室は、机も椅子も何もかも小さかった。

先生も目を細めて「こんなに机と椅子って小さかったっけ?」と記憶を辿るように、椅子に腰かける。私も座ってみたものの、お尻が座席よりはみ出てしまう。

「先生、給食はこっちで頂けるみたいよ」高学年用の教室で待っていると、給食が運ばれてきた。

コッペパンに、かき玉汁、鶏南蛮、コールスローサラダにフルーツポンチ、牛乳という組み合わせだった。

とても懐かしく、そして優しい味付けだった。昔小学校の給食で、給食を作ってくれていた調理師のおばさんが、大きな鍋を、大きなしゃもじでかき混ぜていた光景が目に浮かんだ。

「私ね、カレーライスあまり好きじゃなかったけど、給食のカレーライスは大好きだったの。カレーライスの日は決まってニンニクの匂いがして、お腹がよく鳴っていたな」

「へえー。でもきっと沢山作るから美味しいのもあるかもね。」先生もあっという間に平らげてしまった。
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