お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
由美子さんはファーのジャケットをノースリーブのニットのワンピの上に羽織り、いつものようにきれいに巻いた巻き髪で、メイクもぬかりがない。

先生は細身のスーツに、プラダのビジネスバッグに今日はだて眼鏡をかけている。身長は178センチだというが、顔が小さいこともあり、もう少しあるように思える。

「はじめまして。本城由美子と言います」満面の笑みで先生に挨拶をする。私たちには無愛想なのに、とトモミと顔を見合わせなんとなく笑った。

「遅くなってすみません。棚橋大雅です」トモミも先生と挨拶を交わす。

トモミは私の耳元で「40歳っていうから、もっとおじさん想像してたけど30過ぎ位に見えるし、すごいイケメンよね。モデルさんみたい」先生の感想をそう漏らした。私が誉められたような気がして、何故だか恥ずかしかった。

「挨拶はそのへんで、お料理お任せで注文しておきましたから」そう由美子さんは笑顔で言って先生におしぼりを差し出す。

「どうもありがとう」先生も笑顔で受け取る。
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