お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
飲み物が運ばれてきて、乾杯する。
左手の薬指にある指輪をみた由美子さんは、「既婚者なんですね、残念。結婚して何年くらいですか?」
「8年かな」
「お子さんはいらっしゃるんですか?」
「・・・いえ、妻だけです。僕の話より、仕事の話を」

家庭の話に及ぶと先生は話を変えた。私の手前、気を遣っているのだろうか?それとも・・・?しばらく雑談をしたあと、仕事の話をしはじめた由美子さん。

先生と私の由美子さんは仕事の話をしはじめた。トモミがいきなり、「あの食事の途中ですけど、私たちはこれで。すみません、由美子さん、先生。立ち入った話になったらお邪魔かと思って」

そう言い、私に帰ろうと促してきたトモミ。

「そうね。難しい話だし退屈させると悪いから、そうしてもらった方がありがたいわ」

「え?」先生は慌てて「せっかくなんだから、皆でご飯食べようよ」

「いえ、またの機会に。お金置いておきます。行こう、詠美」

「ちょ、ちょっと待って、トモミってば」

追いかけて店の外に出た。トモミは店から出て開口一番、
「由美子さんのアイコンタクト、気がつかなかった?早くあんたたち消えなさいって、そんな感じのやつ。あとあとややこしいから、由美子さんに言われた通りにしておけばいいのよ」

「そんな・・・」そう言う私に、
「棚橋先生と由美子さんを2人っきりにしたらまずいの?詠美?」
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