お口にクダサイ~記憶の中のフレグランス~
あれからほどなくして、また由美子さん主催の、例の由美子さんを囲んでの食事会にまた招かれた。トモミは仕事で参加出来なかったが、由美子さんは松嶋さん1人でも参加してね、と言われていたからだ。

開始早々、由美子さんに声をかけられた。

「棚橋先生、とても素敵な方だわ。あのベージュのベンツの内装はかなりお金を賭けてる感じよね。スーツはこの間はプラダだったわ。普段はバーバリーとかtheory(セオリー)、ポール・スミス、アニエスbなんかのブランドみたい。私が独自に調べた所によると」

「・・・」何が言いたいのだろう。私は黙って聞いていた。皆は聞き耳をたてている。女はこういう話が好きな生き物だ。

「35歳の時にあの場所にオフィスを構えた。場所が場所だけに家賃が相当するはず。少なく見積もっても年収2000万って所かしら」

「そうなんですか。知りませんけど」
私にはどうでもいい話だった。帰りたくなってきた。

「先生は非の打ち所がないけれど、1つだけ残念な事があるのよね」

由美子さんの取り巻きたち、外野がえ、え?何?教えてと、知っているくせにわざとらしく由美子さんをせかすように催促する。

「女の趣味が最低ね。鶏ガラみたいに色気のない女がお好きみたい。私の誘いに乗らなかったのは、そのせいよ。鶏ガラ女のせい。ね?松嶋さん」睨むようにして、そう言ってきた。

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