私は滑り台を落ちる夢を見る。
:きみをみる
「はぁ〜……っ…良かったねぇ…!!」
「本当だよねぇ、泣けたね、号泣だよ」
「『君の名は。』最高〜っだね!」
✱
「瀧くんみたいな人と入れ替わってみたいなぁ……」
うっとりした表情の、美雪。
「みつはになりたいよ!」
「真面目にそれだ!」
✱
「ポップコーン、残っちゃったね。」
「美雪がダブルなんか頼むから…」
「麻衣子が全然食べないから…」
「……あれ?!私のせい?!美雪?!私が食べなかったせいなのか?!」
「そうだよぉー……」
泣きべそをかく美雪。
嘘でしょ。私なのか。
「ごめんってぇ、食べる食べる
ヤバイくらい食べる……」
「急がないと次の映画始まるぅぅ……」
「うるさいよ!次の映画タダで見れる?!それはそれでいいなぁ!」
「麻衣子ぉ、多分犯罪……」
ポップコーンを大量に食べる私を、
ぽーっと眺めてるのは美雪。
黒髪。胸くらいまであるサラサラツヤツヤストレートヘアをなびかせて歩いてる、
ほっぺは薄く色付いて、
黒目がくりっとしてて、
肌が白くて透き通って、
背が小さいのに顔が小さくて、
いわゆる……美少女。
「あー!麻衣子、食べ終わった!すごい!」
「食べさせたのは美雪だよ……」
にこにこした顔で手を叩く美雪。
可愛いなぁもう。
あれ、なんか耳が急に、痛……
キィィーーーー……ン
「え……」
耳鳴り、し始めた。
『…子……衣子……麻衣子___…』
私の、名前……聞こえる……
誰?美雪?
目の前には心配した顔の美雪。
違う……美雪じゃない
『お願い…………思い……して…麻衣子……
麻衣子…っ……………あの夢……』
痛い、痛いよ……
誰?頭が痛い、耳鳴りがひどい
誰なの?夢?なんのこと……
その時。
急に目の前が滑り台に変わった。
パイプの形をした、
黄色い滑り台。
静電気がよく起こる、あの、滑り台。
あ……
「夢って……これの事、かぁ……」
✱
「麻衣子?麻衣子?」
現実世界に戻された私は、
また泣きそうな美雪の顔の目の前に。
「あ、あああ、ごめん、美雪、」
「いいよぉ……大丈夫?」
「うん、大丈夫なんだけど、美雪ぃ、」
「んん?なぁに??」
「昔見てた夢 無い?」
「えー?」
✱
「映画見て 思い出したの…
ずっと見てた夢
あと少しで終わりそうな滑り台
滑ってた、私……」