君が好きだと叫びたい
21時、街がひっそりと静まり始める時間に、バイトを終えた先輩が一人暮らしをしているアパートに遊びに来た。


「おっ邪魔しまーす。」

「はい、狭いところですがどうぞ。」


靴を脱いで意気揚々と上がり込む村尾先輩を、部屋に案内する。

本棚に並べられた漫画を見つけると、先輩は子どものようにハシャギ始めた。


「うっわ、スゲェ!1巻から揃ってるのばっかじゃん!設定資料集もある....。もしかしてミノリちゃん、かなりの漫画オタク?」


その設定資料集はタクトと漫画の良さを語る際に、有利に張り合う為に密かに買っておいたものなんだよなぁ〜、っとニヤケながら、「はい。」っと短く頷く。


でも、そんな予定なんてまだ無いけれど。

冷えた麦茶を冷蔵庫から取り出してガラスコップに注ぎ、本棚を見る先輩に差し出した。


「好きなだけ貸しますよ?村尾先輩、本を大切に扱ってくれそうですし、」


村尾先輩が麦茶を受け取ろうとした...その瞬間、彼は私の腕を掴み、強引に引き寄せる。


「わっ!」


コップをカーペットの上に落としそうになり、床と平行に伸ばした腕に神経を集中させ、必死に掴み直したその時だった。


「ちょっ、」

唇に、何かが触れそうになる。

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