君が好きだと叫びたい
部屋に男の人を招き入れたら、こんな風に襲っても良いっていう合図になるの?


あの人は、そんなことしなかったのに....。


どれだけ一緒に時を過ごそうとも、ただ側にいて笑いかけてくれるだけだったのに....。


その時、自分がどれだけ大切に扱われていたのかを、思い知った。

いつも埋まっていた隣が空席になり、改めて気付かされた。

タクトは、私のことを本当に大切にしてくれていたんだって。


世間知らずで自業自得で馬鹿な自分が招いたこんな状況に陥れられても、次々に思い浮かぶのは、慎重が180センチもある、長身オバケの笑顔で。


カーペットの上に倒れた麦茶がジワジワと染みて広がり、背中が酷く冷たい。

「うっ、うっ....」


涙が頬を伝って、胸が痛くて苦しい。


「なっ、なんだよ!押し倒しただけで泣くなよ、うぜぇな。今日のこと絶対誰にも言うなよな、分かったか?」


私が泣き出したことに気付いた村尾先輩が慌てて部屋から出て行くのを、玄関の扉が閉まる音で悟った。


< 16 / 22 >

この作品をシェア

pagetop