君が好きだと叫びたい
「あー!タクト、ごめん!貸りた漫画、学校に持って来るの忘れてきちゃった。」


教室に入るや否や、教卓の前で頭を下げてきた長髪の女子生徒の名は、神崎 実。


「ああ、朝から騒がしいと思えば案の定、ミノリか。別に漫画くらい良いっつーか、返すのなんていつでも良いぞ。」


ミノリの相変わらずどこか抜けている雰囲気はそのままに、俺たちは高校3年生になった。


声も、身体つきも、あれから随分と成長した。


今じゃ俺の身長は180センチ越えており、横に並ぶとミノリとは30センチ定規分は身長差が開いている。


「ありがとうっ。あ、って言うかさ、タクトが今日ウチに寄っていけば良いじゃん。お父さんとお母さんも会いたがってたしさ。」


けれど、彼女との関係はひとつも変わらず。


くっつかず離れずの、幼なじみ特有の距離は健在で。


「じゃぁ、そうするよ。今日も部活があるから、家帰って風呂入った後に連絡する。」


「オッケー!じゃぁ今からお母さん達に、タクトが来るって連絡入れとくねー」


さも当たり前に交わされる約束事を聞いていた友人達が、ミノリが俺から離れたのを確認し、ワッと周りに集まってきた。


「タクト、お前さぁ。あんなに可愛い子が幼なじみで、マジ羨ましいんだけど。いい加減、付き合えば良いのに。」
「今日、部活終わりに神崎さん家に行くんだろ?変な気とか起こらないわけ?押し倒してやろうとかさ、」


朝の爽やかな教室に似つかわしくない男の欲望丸出しな質問に、俺は首を傾げる。


「は?なんで幼なじみにそんなこと思うんだよ。アイツはもう空気みたいなもんだから、特にそんな風に感じたことねぇよ。」


何かの間違いでそんなことをしたところで、アイツが傷つくのは目に見えて分かるし、な。
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