君が好きだと叫びたい
時は過ぎ、部活も引退し、恋だ漫画だと騒げなくなってきた受験のシーズン。


「ねぇ、タクトは志望校どこにしたの?」

受験勉強の息抜きにおいでよ、っと招かれ訪れたミノリの部屋で、静かにそう問われる。


俺は携帯を弄りながら小さな息を吐き、受験というプレッシャーに目を閉じた。


「....錦戸大学。合格したら家から遠いし、独り暮らし始めなきゃならねぇけどな。」

「ふーん。私は、至宝大学。私も家から遠いし、独り暮らししなきゃなんないの。」


至宝大学って、ここから相当遠くなかったっけか?


そんな俺の思考を肯定するかのように、ミノリはベッドの上に体操座りのまま、うな垂れていた。


「あーあ、じゃぁ、大学になったら離れ離れって事だね。」


離れ離れ、か....。


「なんだか、それも変な気分だな。ま、受かったらの話しだが。」

「そうだねー。あはは、タクトと一緒にいると受験ってこと忘れて、気分緩んじゃうよ。」

「俺も同じ気分だよ。」



幼稚園からずっと一緒に育ってきた彼女と、離れ離れになる。

そんなことに少し驚いている自分がいて、自分でも笑えた。

よくよく考えてみればそんなこと、当たり前であり、大人になるには避けて通れない、未来のはずなのに。


(俺って意外と馬鹿なのか?)


改めて口されないと、気付かないなんて。

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