Open Heart〜密やかに たおやかに〜
病室を出て、廊下に並べられている長椅子に腰掛ける。
首にぶら下げているネックレスに手をやり、首から外すと掌に乗せて眺めた。
シュウちゃんが好きだ。
この後に及んで、まだ好きだ。
シュウちゃんと結婚したかったな……。
瞼を閉じると浮かんでくるシュウちゃんの笑顔。大好きな頰の笑い皺。
いつか、こうして目を閉じてシュウちゃんのことを考えてもシュウちゃんの顔を思い出せない日がやってくるのだろうか。
……シュウちゃん。
……
ため息をついて私はネックレスを握りしめスカートのポケットに入れる。
きっと、もう二度とはめる事のないデザインリングだろう。
返した方がいいだろうか、それとも捨てるべきだろうか。
どちらの方がシュウちゃんを傷付けずに済むだろう。
そんなことを考えていたら、病室から浩美が出てきた。
「お姉ちゃん」
私の隣に座った浩美。
「ん?」
「本当は言わないつもりだったんだけどね」
「なに?」
学校のことで相談でもあるのだろうか。
「実はね……」
…
…
泣かないと誓った私は、浩美から話を聞いただけで、すっかりその誓いを破ってしまっていた。
掌で顔を覆い、声を殺して泣いた。
いつまでも泣き続け、泣き止むことが出来ない私は浩美に抱きしめられて、また泣いた。
泣きながら、ポケットに入れようとして入れられずに握りしめたままでいた手をポケットから出した。
震える掌をゆっくり開いていく。
掌の上に絡まりそうになっているネックレスがある。その真ん中に光るデザインリング。
もう一度、デザインリングを掌に乗せたまま、ぎゅっと閉じて握りしめる。
握った拳を胸の前に持ってきて、胸に当てた。
シュウちゃん。
シュウちゃんを思うと泣けてくる。ただ、泣きたくなる。会いたい。
私は、あなたにとても会いたくてたまらないよ。
涙が溢れてしまう。とめどなく、際限なく。
一体…
どうしたら……
私は一体どうしたらいいのだろう。