Open Heart〜密やかに たおやかに〜
もし本当にシュウちゃんがまだ私を好きでいてくれたとしても、それでも、私はシュウちゃんから離れなければならない。
浩美が学校を辞めて働くとまで言ってくれた。
父さんの入院費は、みんなで働いてなんとかならないかと浩美は言った。
だけど、入院費、これからかかるであろうリハビリ費用だけの話ではない。社長には借金も肩代わりしてもらったのだ。
私がシュウちゃんから綺麗に後腐れなく離れること、そして、シュウちゃんが私に愛想つかして自然に離れていくように仕向けることを条件に社長と1億円以上の契約を結んだ。
私は、今更もう戻れない。
どう考えても、シュウちゃんのところには戻れない。
シュウちゃんから貰ったデザインリングをポケットに入れ、握りしめていた掌を開き私は、ようやくデザインリングを手放した。
これでいい。
シュウちゃんには、私じゃなくもっとふさわしい人がいるのだから。
シュウちゃんを困らせたり、不幸せになんか出来ない。
私に出来ることは……。
「母さんも浩美も少し休んだら?」
ベッドの横に並んで座る母さんと浩美の後ろに立ち、2人の肩に手をまわす。
「大丈夫、私が見てるから、2人とも少し休んで」
私は、目の前にいる家族を守りたい。
それから、シュウちゃんの側にはいられないけれど、大好きなシュウちゃんの幸せを見守りたい続けていく。
もしも、まだ、シュウちゃんが私を好きでいてくれるなら、私が出来る精一杯のお返しは、シュウちゃんの幸せを祈ること。そのために出来ることなら、なんでもしたい。
例え、それでシュウちゃんが本当に私を嫌いになったとしても。