Open Heart〜密やかに たおやかに〜
「何って、そりゃあ……なんというか」
シュウちゃんは、29歳だが、こういう時には決まって口ごもる。毎回だ。
「sexのこと?」
「いっ! いやぁ、そればかりでも無いよ。樹里、今のは露骨過ぎだって」
「本当のことでしょう。それに恥ずかしいことなわけ?」
「いやぁ、そうじゃないけど」
シュウちゃんは、私から腕を離した。
くるっと振り返りシュウちゃんを見上げる。
困ったような恥ずかしいような顔をしてるシュウちゃん。
全く、なんというか、この人は……。
私はシュウちゃんを見上げて、ジッとみつめた。年上だし、付き合ってから2年以上たつけど、
いつまでたってもたまらなく可愛らしい人だ。
シュウちゃんの両腕を引き寄せて、私は背伸びをする。
背伸びをして、シュウちゃんの唇に自分の唇をそっとつけた。
唇を離すと、すぐにシュウちゃんの唇が追いかけてきてキスの続きが始まる。
シュウちゃんの厚めな唇が好きだ。吸うと、さくらんぼを食べているような気になる。
口の中に入ってきて、うごめくシュウちゃんの舌は、私の感じる部分をやたらと知っていて、そこをうまく攻めてくる。
攻め落とされないうちに唇を離す。
長いキスの後、シュウちゃんが私の腰へ手をまわし抱き寄せて優しく背中を撫でる。
「好きだよ、樹里」
甘い声で囁くように言う。
「ん、私も好き」
シュウちゃんは、私の膝の後ろに手を入れ軽々と抱き上げる。
「シュウちゃん!」
「え?」
私を抱き上げたままで、その場に止まるシュウちゃん。
「だから〜まだよ」
「え? まだ?」
「そうよ。手も洗ってないし、うがいもしてないし、ごはんも食べてない」
「いーよ。そんなんは…後で」
また、私を抱っこしてベッドの方へ進んでいくシュウちゃん。
「ダメ!」
「え、マジで?」
シュウちゃんは、私の顔を大きな目をして見つめてきた。
「マジよ。下ろして」
足をバタバタさせる。
「樹里〜」
「ダメったら、ダメ。先にごはんよ。私は流されないんだからね!」
「え〜、たまには流されろよ。キスしてきたのって樹里からだし〜」
ちょっと、頬を膨らませているシュウちゃん。
「だから何」
「だから、てっきり」
「てっきり何?」
「いやぁ、なんかいーのかなぁって思ったのに」
「何が」
「え、あっと…その」
私を下ろして顔を赤くするシュウちゃん。