Open Heart〜密やかに たおやかに〜
「下町の工場は、いつでもヒィヒィ言ってるもんだよ。泥臭く汗を流してさ」
「宮本くん……」
「傘下に入る話は、今朝早く、岡田社長にきちんと断りいれたから。もう、俺の方は心配するな。それを早く宮路に伝えたくて。休みに呼び出して悪かったな」
宮本くんは、私の肩をポンと叩いた。
ぶんぶんと頭を横に振る私。
「俺、同級生のお前に人生をなげてもらうほど、落ちぶれてないから」
「宮本くん……それで宮本くんは後悔しないの?」
優しく笑ってくれている宮本くんが歪んで見えてきていた。
「バカ、俺は後悔しない男なんだよ。知らなかったのかよ」
「本当に……ごめんなさい、宮本くん」
立ち上がり頭を下げた。
「同級生だろ? 頭なんか下げんな。俺とお前は友達だ。そうだろ?」
ガッチリした宮本くんの手に私は肩を掴まれ椅子に座らせられる。
「あとは、頼みますね、マキさん」
マキにそう言ったあと、宮本くんは私に向いて手を振る。
「宮路。またな、バイバイ……それと、ハッピーメリークリスマス!」
そう言ってから、お店の会計場所へ歩いていく宮本くんを涙を指ですくいながら見送った。
すごく胸がいっぱいだよ、宮本くん。
本当にこれでいいの? 宮本くん。
「樹里、なんて顔してんのよ、余計なことは考えないで、宮本さんからのクリスマスプレゼントなんだから、ちゃんと受け取りなさいよね」
マキに言われて、「うんうん」と頷いた。
宮本くんがくれた凄く大きなクリスマスプレゼント。
一生、大切にしないといけない、そう思った。
「マキ、私シュウちゃんに、このことを伝えないと!」
「シュウちゃんって岡田課長のこと?」
首を縦に動かす。
「それなら、大丈夫よ」
余裕の笑みを見せカップに口をつけるマキ。
「なに、大丈夫って?」
訳が分からずに穴が開くほど、まじまじとマキを見つめた。