Open Heart〜密やかに たおやかに〜
唖然としていたシュウちゃんだったが、次の瞬間、私と男性を引き離すようにして間に入ってきた。
「コレは、どういうことでしょうか? 宮本さん」
怒ってる。シュウちゃんってば、激怒りじゃん。
「ああ、すいません。いやぁ、彼女に会えたことがすごく嬉しくて」
宮本氏は、にっこり微笑んで私を見た。
なんだかドキっとしてしまう。それ位に魅力的な笑顔だった。
「知り合いか? 宮路」
シュウちゃんは、眉毛を上げたまま私を見る。
頭がもげるくらいに激しく頭を横に振ってみせた。
「存じあげません」
「宮路、俺だよ。宮本 二郎。わかるだろ? 」
宮本氏は、右の人差し指で額の真ん中にある傷を指差した。
あっ、この傷。
それに、宮本 二郎。宮本……。
額にある3センチ程の傷、そして、宮本二郎という演歌歌手みたいな名前。
私の遠い記憶がものすごいスピードで鮮明に蘇ってきた。
「宮本くん! やだ本当だ! 全然わかんなかった。ゴメンゴメン。やだ、元気? 大きくなってぇ。中学以来じゃない? なんでこんなところに?」
中学3年の時に同じクラスだった宮本くんだ。額の傷は、宮本くんが休み時間に朝礼台で遊んでいて足を踏み外した時に出来た怪我だ。
当時近くにいた私は、額から血をダラダラ流していた宮本くんを良く覚えている。たしか何針か縫ったはずだ。
「なっ、偶然だよ。偶然、こんなところであうなんてよぉ〜、運命だったりするんじゃねーかな?」
私と宮本くんは、お互いの手を握りあって飛び上がらんばかりに再会を喜んだ。
「本当だね〜。懐かしいなぁ〜」
「だなっ、宮路、せっかく会えたんだから、今夜ごはんでも行かないか? 話したい」
「そうだね〜、行き」
「宮路」
返事をしようとしたら、横からシュウちゃんが話に入ってきた。
「えっ、はい」
「下がっていいから」
「え?」
「もう、ここはいいから、自分の仕事に戻ってろ」
「あ……はい」
握っていた宮本くんの手を離し「宮本くん、またね」と言って私は頭を下げて会議室から出た。
シュウちゃんってば、もう少し再会を喜ばせてくれてもいいのに。ケチね。
たぶん、妬いているのかもしれない。今まで妬かれるようなことがなかったから気がつかなかったが、シュウちゃんはヤキモチやきなのかもね。
それだけ愛されているってことかな?
廊下を歩きながら、中学の同級生に会えたことや、思いがけずシュウちゃんにヤキモチを妬いてもらえたことで、なんだかテンションが異常に上がってきていた。
こんな偶然もあるんだなぁ。
それにしても、宮本くんも大人になったもんね。胸板なんかガッシリしてたな。
すっかり大人の男性になった同級生を見て懐かしいやら気恥ずかしいやら、いろんな気持ちで胸がいっぱいになっていた。