Open Heart〜密やかに たおやかに〜
ようやく笑い終えた宮本くん。騒がしい店で何よりだった。そうでなければ私の恥ずかしさは倍増していたと思う。
宮本くんは、唐揚げを口に入れもぐもぐして、あっと言う間に飲み込んだ、というかビールで流し込んだ。
「俺が好きだったのは〜3年の時にはクラス離れちまった子です〜残念だけど、お前じゃないよ、宮路! ぶっはは」
殴りたくなるほど豪快に宮本くんが笑う。
「笑いすぎ。宮本くんって、凄くムカつく」
「ごめんごめん。いやぁ、昔から宮路ってさ、ほけら〜ってしてたけどさ、今でも変わんないな。懐かしい〜」
ほけら〜って何?
マヨラ〜でもシノラー、パネラーでもなく、新しい言葉のようだ。
「ほけら〜って何?」
「そういうとこ! ほけら〜ってしてるよ」
「だから、ほけら〜って何」
「ん〜うまく説明できね〜。ほけら〜って感じだよ。感じ」
「それ、褒めてないよね?」
「うん。そう」
笑顔で答える正直者だ。
やっぱりだ。
懐かしい。中学の教室に戻ったみたいな気分だ。宮本くんって、こうだった。たまに凄く頭にくる奴だった。
こんな奴とごはんなんか食べようなんて、私はどうかしていた。
「でも、不思議にモテテたよな〜青木に山里、C組の横山とかな」
「…」
やっと、思い出した事があった。
確か、宮本くんは、嫌な奴と思わせてすぐに、なんだいい奴じゃんと思わせるテクニックを持った奴だった。
それだよ、宮本くん。
最初から、そういう話を言ってくれれば、楽しい気分で酔えたのに。
「そうだったかなぁ…」
良く覚えていたが、あえてしらばっくれてみた。馬鹿にされた後だから、少し格好つけてみたかったのだ。
「覚えが悪りぃなぁ〜、お前」
「ちょっと、あのね〜!」
覚えが悪いと言われて頭にきていた。格好つけただけで、ちゃんと覚えているっつうの! あまりにも失礼だ。