Open Heart〜密やかに たおやかに〜
「ムキになる所も変わんないな。お前と話してると凄く楽しかったのを思い出すよ。からかい甲斐があるよな、宮路って」
「からかってたの?」
「うん。お前が『失礼ね!』とか言って怒るのが面白いからさ。ごめんな」
「宮本くんも全く変わんないね。あの頃、隣の席だった時に毎日言い合いして、担任に注意されてたよね〜」
あの頃、宮本くんと言い合いしながらも、何げに楽しかったと記憶している。
「うん。色々言っちまうのは、やっぱり好きだったからだよな」
楽しげに笑顔を浮かべて、私を見る宮本くん。その笑顔に不覚にもドキリとする。
「え?……ちょっと〜また、からかうのね。わかってますよ。特別な好きじゃないんでしょう。2度同じ手には引っかからないんだから」
「……」
宮本くんは何故か黙っている。私を見る宮本くんと、しばらく向きあって目を合わせていた。
なんだろう、この沈黙。
戸惑いながら、私は宮本さんを見ていた。少しして、宮本くんはフッと笑う。
「なんだ。引っかかね〜のか、つまんね〜なぁ」
「引っかからないわよ。それより……宮本くんって縫製工場で働いてるの?稼業を手伝ってるの?」
前に、シュウちゃんから国内のある縫製工場が、うちの会社のグループ傘下に入るという話を聞いた覚えがあった。
確か宮本くんは、中学の近くにあった割と大きな縫製工場の息子だった。だから、その話を思い出したのだ。
「親父が死んでさ、今年、継いだんだ」
「えっ、お父さん亡くなったの?」
「ああ、胃癌だよ。癌」
「そう……」
中学を卒業してから9年。
そりゃ、お互いに色々あったに違いなかった。