Open Heart〜密やかに たおやかに〜


「だから、今は俺が社長。つっても所詮、町工場だからな。ははは」
明るく話す宮本くん。そういえば、宮本くんは、いつも元気で明るかったイメージがある。

きっと、宮本くんにも悲しい時も辛い時もあったはずなのに、そんな顔は見た事が無かったように思う。

今も宮本くんは、楽しげに笑っている。弱い所を見せたくない人なのかもしれない。

弱い所をみせまいと頑張っている人には、私も合わせた方がいい。そうするべきだと思えた。
「町工場だろうが、社長は、社長だよ。じゃ、宮本社長に乾杯しますか」

空になったカルピスサワーのグラスを前にかかげる。

「なんだよ、宮路、空になってんだろ。まず注文しろ」

「そうだね。…あ、すいませ〜ん、カルピスサワーのおかわり下さい」

「またカルピスサワーかよ。ほーんと宮路は芸がない」

「芸ならあるわよ。私のモノマネ覚えてる?」

「あ〜デビ夫人な。あれ、まだ出来る?」

「出来るわよ。もちろん!」

久しぶりに再会した同級生。身体は大きくなっていたけど、中身はあんまり変わってなかった。
懐かしい仲間だと感じる。あの頃、それなりに悩みもあったが、それも今ではいい思い出になった気がしている。

再会出来た仲間が、明日も笑顔でいられるように私は、モノマネを披露することにした。

未だに馬鹿げた真似をする仲間を、日常の中でふと思い出して『馬鹿だよなぁ』と笑ってくれれば、それで私も少しは人の役に立っている気がする。

「いくよ。……あ〜たね〜、そんなことして、よく平気よね〜、信じられない!」

「ぶっ! 似てる似てる!」
私のモノマネに笑って拍手をくれた宮本くん。

宮本くんと会えて良かった。
今日、久しぶりに話せて楽しかった。

シュウちゃんにも話したいな。同級生と話せて楽しかったって、そう思った。
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