Open Heart〜密やかに たおやかに〜
4、しなる
家に帰ってからすぐにシュウちゃんへ電話をかける。ジャケットも脱がずにダイニングにある椅子に座ってスマホを耳に当てた。
「もしもし、シュウちゃん?」
「ん、樹里、今どこ? まだ外なら迎えに行く」
相変わらず、プライベートのシュウちゃんは私に甘く、心配性だ。
「もう、家だから大丈夫だよ。ありがとう」
「そっか、楽しかったか?」
「うん、とっても。ありがとうね、シュウちゃん」
「何が」
「宮本くんとごはんに行かせてくれて」
「あ〜うん。どーいたしまして…かな? 実を言うと心配してた。誘われたりしなかったか?」
シュウちゃんが眉毛を下げて心配する様子が目に浮かぶようだ。
だから、いつもみたいに意地悪したくなってきた。
「誘われるって何に〜?」
「え、いやぁ……その、もう一軒とか、あるいは」
「あるいは?」
「静かな場所で話をしたいとか…」
シュウちゃんってば、やっぱり心配してたんじゃない。可愛すぎ。
笑いたいのを我慢して、少しからかってみる。
「誘われた」
「えぇ! 嘘だろ! なんだよ、あいつ! でも、行かなかったんだろ?もう家にいるんだから」
焦っているのか声を大きくするシュウちゃん。
「誰が今、私の家にいるって言ったのよ」
「え、樹里! お前……」
絶句するシュウちゃん。
くすくす笑っているのが聞こえないように口を押さえた。
さすがのシュウちゃんもブチギレそうだから、このくらいで冗談はよしておこう、嘘だよ〜からかっただけだよ、そう言うつもりだった。なのに……。