Open Heart〜密やかに たおやかに〜
突然、声のトーンを落としてシュウちゃんが真剣な口調で話してきた。
「……婚約は、樹里にとって形だけだったのかよ」
ただの冗談のつもりが、婚約の話になるくらい深刻になってきた。
ヤバイな。本気で誤解させちゃったかな。
「あのね〜シュウちゃん」
私が話を続けるのを待たずにシュウちゃんは言葉を続ける。
「お前を信じた俺が馬鹿だよな。あ〜俺が馬鹿だった。こんな風になるなら親父が持ってきた見合いの話、断るべきじゃ無かったな!」
予想外の話の展開に私は、戸惑ってきていた。
「見合い?」
親父が持ってきた見合い?
どういうことだろう。
れっきとしたとは言えないかもしれないが私というフィアンセがいるのだ。それなのにシュウちゃんに見合い話? それも今更何故お義父さんから持ち上がるの?
婚約を知らない外部の人から持ち込まれた話なら納得できる。だけど、シュウちゃんは『親父が持ってきた見合い話』と言ったはずだ。
お義父さんも私のことは知っているし、認めてくれて婚約式も挙げたはずだ。
「えっ、いや……今はそんな事より樹里の話だろ」
明らかに電話の向こうでシュウちゃんは、うろたえている。ますます、おかしい話だ。