Open Heart〜密やかに たおやかに〜
「そんな事? 婚約してるのは外部に秘密だけど、お義父さんはご存じよね。式にも出てくれたし…なのに、どうして見合い話をシュウちゃんに持ってくるの? 一体どういうこと?」
私の頭は、パニックになりそうだった。意味がわからない。
「それは、だから……。 なんで樹里がキレるんだよ。キレたいのは俺の方だ」
「シュウちゃん、見合いって何なの? 」
「お前こそ、どうして宮本なんかと」
どうしよう。
シュウちゃんから聞きたい答えがすぐに返ってこない。
胸が苦しい。大好きなシュウちゃんと会話がかみ合わない。いつもみたいに楽しく話が出来ていない。
これは、わたしがツマラナイ冗談を言ったからなの?だから、こんな感じになったの?
もう、泣きたくなるような気分で私はテーブルに左頬をつけた。
冷たいテーブルが私の高ぶった感情を冷やしてくれるかと期待していた。
「……冗談だったのに」
テーブルにつけた顔の部分が冷えてきた。でも、そう感じたのも一瞬だけだった。
「え?」
顔の熱の方が勝り、テーブルの方が温かい感じになってきた。私はテーブルからゆっくり顔を離す。
「私のは冗談だったのに。考えてわからないの? シュウちゃん! 私と2年も付き合ってるのに、本気で私をそんな人間だと思ったの?」
「冗談って……樹里、本当か? 今のは、ちょっとやりすぎだろ」
シュウちゃんの声のトーンが、まだ私を疑っているように聞こえた。それに私が悪いと言いたそうだ。
「今の冗談は、私がやりすぎたと思う。ごめん……でも、シュウちゃん、見合いって何」
手がスマホを落としそうになるくらいに、すごく震えていた。
シュウちゃんに私の期待を裏切らない返事をして欲しい、そう願っていた。