Open Heart〜密やかに たおやかに〜
「どうもおかしいのよね〜」
疑わしそうな目を私に向けてくるマキ。
マキは鋭い人だから、ひょっとすると私とシュウちゃんの特別な関係に気がついたのかもしれない。
「そおかな? 気のせいじゃない」
「羨ましいよね〜。イケメン課長に年中触られて」
「触られてって……いや、だけど頭じゃん」
さっきシュウちゃんがくしゃくしゃした髪を触ってみせる。
「頭とか場所の問題じゃないの。私は入社してこのかた、自慢じゃないけど課長にどこも触られたことありませんよ」
じっとりした目でマキは私を見る。
「私だけじゃないと思うよ。しかも……課長が触れるのは、なんだか知らないけど樹里だけだと思う」
「そ、それはさ、覚えてないだけじゃないの?」核心を突かれそうなマキの勢いに変に焦ってきた。
「イケメンに触られたら、私は絶対に忘れませんから。そういった記憶は確かだから」
怒ったように言って、ぷりぷりしながらマキは、椅子を動かし自分の場所へ戻っていく。
「なんで樹里ばっかりかなぁ、ズルッ」
戻る途中でマキが、そう言ったのが聞こえてきた。
マキは、やっぱり鋭い人だ。私とは見る目が全然違うとなぁ〜と感心してしまうばかりだった。